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私はとりあえず、車を運転して病院に向かった。
途中どこをどう走ったのか覚えていない。
ただ頭にあったのは、事故を起こしてはいけないということだけだった。
2時間半かけてやっと病院に到着し、長い廊下を走った。
病室に入ると、医師が素手で人工呼吸をしてくださっていた。
常日頃からその旨を伝えていたそうだ。
入院し意識がなくなった時、彼女はすぐにそれを医師に見せ、延命措置はしないように頼んだ。
医師は、入院してまだ日が浅いと初めは祷跨していたらしいが、手渡された書面を見てうなずき、生命維持装置を外したという。
電気ショックによるもので、父の体が宙にでも浮いていたら、私は医師につかみかかっていたかもしれない。
私は「ありがとうございました」と頭を垂れた。
もう十分だった。
これ以上の延命措置は死にゆく者への冒涜だと思った。
葬儀は長男の元で盛大に行われたが、私にとっては病院での父との別れが葬儀だったと思っている。
彼女の場合はお母様がご高齢ということもあり、一切合財を彼女がひとりですませた。
市の霊園を購入し、お父様の遺骨を納め、法事にはお坊さんのお経代わりにお父様の好きだった詩を読んでさし上げているという。
お寺のご寄付に関して聞くと、お父様の実家のお寺さんは、檀家がみな丹後ちりめんを作っている人たちなので、その出来不出来によって納める時もあれば、納められない時もある。
本来、お寺さんのご寄付とはそんなものだという。
心臓を停止させ、死者を送り出す儀式は、個人の遺志に耳を傾けられる者にだけ与えられた使命のように思えてならない。
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